フロアコーティングを依頼すると、当日は何時間もスタッフが床にかがみ込んで作業をしています。「コーティング剤を塗るだけなのに、なぜそんなに時間がかかるのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。

実は、コーティング剤を塗る工程そのものは、施工全体のごく一部です。仕上がりの良し悪しは、その前段階の下地処理でほぼ決まります。この記事では、フロアコーティングが完成するまでに何が行われているのか、工程を順番に解説します。

新品の床と、使用中の床では工程が変わる

まず前提として、フロアコーティングの工程は「新築で誰も使っていない床」か「すでに生活している床」かで大きく変わります。

  • 新品(未入居)の場合:クリーニング→コーティング
  • 使用中の場合:クリーニング→ポリッシング(研磨)→コーティング

使用中の床には、日常生活でついた細かい傷、ワックスの劣化、皮脂汚れなどが蓄積しています。この状態にそのままコーティング剤を塗っても、汚れや傷ごと被膜で閉じ込めてしまうだけです。ポリッシングという研磨工程を挟むことで、表面をリセットしてからコーティングを乗せる。これが使用中の床にとって必須の工程になります。

工程①:家具の移動と養生

動かせる家具をすべて移動させたあと、建具やドア枠、巾木など、洗浄剤やコーティング剤が付着してはいけない部分にマスキングテープで養生を行います。この養生が甘いと、コーティング剤が周囲に飛び散って変色やシミの原因になるため、地味ですが重要な工程です。

工程②:ワックス剥離

使用中の床の多くには、過去に塗られたワックスの層が残っています。このワックスの上からコーティングをしても密着せず、すぐに剥がれてしまいます。専用の剥離剤を使ってワックスの層を完全に溶かし、拭き取って除去します。

ワックスが何層にも重なっている床では、この剥離作業を複数回繰り返す必要があります。ここを手早く済ませてしまう業者と、時間をかけて丁寧に行う業者とでは、最終的な密着度と持続年数に差が出ます。

工程③:ポリッシング(研磨)

ワックスを剥離したあとの床は、細かい傷やくすみが目立つ状態になっている場合があります。そういう時はポリッシャー(研磨機)を使い、表面を均一に磨き上げます。

研磨には主に2つの目的があります。1つは、日常生活でついた微細な傷を目立たなくすること。もう1つは、床表面の凹凸を整えて光の反射を均一にし、コーティング後の艶ムラを防ぐことです。

ここで重要なのは、「深い傷をすべて削り切ろうとしない」ことです。無理に深く削ると、フローリングの化粧材(表面の薄い木材層)そのものを削りすぎてしまい、逆に耐久性を落とすリスクがあります。プロの研磨は、目立つ傷やくすみを均していく作業であり、床材そのものを痩せさせない範囲で仕上げるバランス感覚が求められます。

工程④:細かい傷の補修

ポリッシングだけでは対応しきれない、目に見えるほどの傷やへこみがある場合は、この段階で個別に補修します。パテや補修材で傷を埋め、周囲の色味に合わせて仕上げます。

工程⑤:脱脂

研磨や補修のあと、表面に残った油分や研磨カスを専用の脱脂剤で拭き取ります。ここで油分が残っていると、あとで塗るコーティング剤が弾かれてムラになったり、密着不良を起こしたりします。目に見えない工程ですが、コーティングの持続性を左右する重要なステップです。

工程⑥:集塵(ホコリ取り)

掃除機をかけたあと、粘着テープや専用の集塵シートで細かいホコリを徹底的に取り除きます。ホコリが1粒でも残っていると、コーティング後にその部分だけ小さな盛り上がりや曇りとして残ってしまいます。仕上がりの美しさは、この地味な集塵作業の丁寧さに大きく左右されます。

工程⑦:下地材(プライマー)の塗布

フローリングの種類によっては、コーティング剤を塗る前に専用の下地材(プライマー)を塗布します。プライマーは、コーティング剤とフローリングの密着力を高める役割があります。特にシートフローリングなど、下地材なしでは十分な密着が得られない床材では、この工程が欠かせません。

プライマー塗布後は1時間ほど乾燥させ、その後最終的なクリーニングと状態チェックを行います。

工程⑧:コーティング剤の塗布

いよいよコーティング剤を塗布します。季節・気温・当日の湿度によって、コーティング剤の乾燥スピードは変わるため、専用モップや刷毛・ローラーを使い分けながら、その日の環境に最も適した手順で塗っていきます。塗りムラが出ないよう、一定方向に均一に伸ばしていくのが職人の技術です。

工程⑨:乾燥・硬化

塗布後、コーティング剤の種類に応じて乾燥・硬化させます。ガラスコーティングなど自然乾燥タイプの場合は数時間、UVコーティングの場合は専用のライトを照射してその場で硬化させます。この間は床への立ち入りができないため、施工中は該当エリアが使用禁止になります。

工程⑩:最終検査・引き渡し

乾燥後、下地のレベリング(平滑さ)と密着状態を確認し、必要であればトップコートを追加で塗布します。最終的な仕上がりを検査したあと、養生テープをすべて撤去して施工完了です。

引き渡し時には、専用の履物で施工箇所を実際に歩いて確認してもらい、お手入れ方法や注意事項の説明、保証書やメンテナンスシートの受け渡しを行うのが一般的な流れです。

なぜDIYでは同じ仕上がりにならないのか

ここまでの工程を見てわかる通り、フロアコーティングの品質を決めているのは「コーティング剤を塗る技術」よりも、その前の下地処理の丁寧さです。ワックス剥離、研磨、脱脂、集塵——どれか1つでも手を抜けば、コーティングの密着不良や仕上がりのムラにつながります。

市販のコーティング剤を使えばDIYでの施工も不可能ではありませんが、床材ごとに必要なプライマーの有無や研磨の加減を見極めるには経験が必要です。特に、床材の種類によっては専用のプライマーが必須で、それを使わずに施工すると十分な密着が得られず、数ヶ月で剥がれてくることもあります。

まとめ|見えない工程が仕上がりと持続年数を決める

フロアコーティングは、コーティング剤を塗る瞬間だけを見ると単純な作業に見えます。しかし実際には、家具移動から養生、ワックス剥離、研磨、脱脂、集塵という地道な下地処理の積み重ねがあってはじめて、長期間持続する被膜が完成します。

使用中の床であれば、ポリッシングという研磨工程を挟むかどうかが、コーティングの密着度と持続年数を大きく左右します。施工を依頼する際は、こうした下地処理にどれだけ時間と手間をかけているかも、業者選びの判断材料にしてみてください。

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